旭川きのこの会

自然ときのこを通して、楽しい仲間と交流してみませんか

                               平成28年11月27日

         発足30周年を迎えて



        

旭川きのこの会
会長 北郷 興亜

       
 

 昭和62年11月「自然ときのこを愛し、きのこを友とするものが、きのこを学びきのこを通じて交流する。」を目的に発足した当会は今年、発足30周年という大きな節目を迎えます。

 私は発足当初から今日まで会の運営や事業の展開等に関わって参りましたが、その中でこの日を迎えられることは、正に感無量、大きな喜びであります。  

 これ一重に、菌類に関する系統的なご指導を頂いた、北海道大学名誉教授五十嵐恒夫先生を始め、当会の名誉顧問故仁和田久雄先生・顧問の故袰屋朝雄先生のご教示、そして会員諸兄姉や役員各位のご協力のたまものと深く感謝をいたしております。

 さて当会は発足以来、幾多の変遷を経て今日に至っておりますが、ここでは発足20周年以降の主な出来事について申し述べてみたいと思います。

 当会の大きな出来事としては、発足当初からご指導を頂いた、大御所的存在の仁和田先生、袰屋先生のご逝去ではないでしょうか。生者必滅とはいえ、私はお二人とは30数年来の親交、往時を偲ぶと万感胸に迫るものがあります。改めて、ご冥福をお祈りいたしたいと思います。

 その一方で、数年来の懸案事項であった、HPを開設(平成26年)することができました。当会の30年間の知見すべてを公開し、同好の方々と情報や新たな知見の交換等、今後の活動へつなげてまいりたいと思っております。

 菌類に関しても大きな変革がありました。

 私がきのこに興味を持ち始めた、30数年前のアマチュアによる菌類の同定や分類は、外部の形態や胞子紋などを図鑑と照合する、いわば絵合わせ的なものであったのですが、やがて顕微鏡による胞子や組織の観察に加え試薬による呈色反応を試みる手法へと変化をしてきたのです。

 今関六也・本郷次雄両先生の名著()「原色日本菌類図鑑」・「続原色日本菌類図鑑」の影響もあり、私ごときアマチュアも顕微鏡を購入し、試薬の調達へ奔走したものでした。

 近年までは、この手法が菌類の同定や分類の主流であったのですが、20世紀後半から急速に進展した分子生物学や分子遺伝学は、形態や生態の観察を通して、間接的にしかとらえることができなかった生物相互の遺伝的関係を、遺伝情報を担うDNAレベルで直接的にとらえることを可能にしたのです。

 菌類においても、1990年代以降、リボゾ-ムRNA遺伝子やタンパク質をコ-ドする遺伝子などの塩基配列を読み取って比較し、その系統や類縁関係を推定する手法が確立されてきました。

 その結果、従来の手法による分類体系が根底から見直され、新たな分類体系が生まれてきたのです。今この時期、菌類の同定や分類体系は大きな転換期を迎えたといっても過言ではないでしょう。

 「北海道産ハラタケ類の分類学的研究」の著者のお一人である、アマチュアの菌類研究家竹橋誠司氏は、その著書で「昨今は、分子系統解析による研究が花盛りで、従来の形態観察を中心とした研究は、徐々に取り残されていくような不安を覚える。」と述べておられますが、正に同感、今後はアマチュアとプロとの連携について、趣味の会はどのように関わるべきなのかを真剣に考えていかなければいけないと思っております。

 科学は時代とともに進歩し発展します。旭川きのこの会も進歩し発展しなければいけません。そのためには、若い人材の確保です。熱意溢れる若い人材が必要なのです。

 当会には、小学3年の男の子から20~40代の会員も活動していますが、発足40年、50年に向け、彼ら若い人材をいかに導いていけるかが、会発展の大きな命題となってくるのではと思っています。

 以上、20周年以降の10年間を雑多に振り返りながら、将来的願望を述べさせていただきました。

 今後とも先達各位の変わらぬご指導と、会員の皆様のご協力をお願い申し上げ、発足30周年のご挨拶といたします。

 ありがとうございました。

         今関六也・本郷次雄 :原色日本菌類図鑑(1957)  

  今関六也・本郷次雄 :続原色日本菌類図鑑(1965)